不可視の流行

「流行」というと、何を思い浮かべるだろうか。
最近だとやっぱり妖怪ウォッチとかアナと雪の女王とかが出やすいだろうか。
こういった固有名詞の流行以外にも、「今年の流行色は○○色」とか「アイドルグループブーム」といった抽象的な流行もある。(前者は一回限りだけれども、後者は周期性がある場合も多い)

でも、世の中にはそういったわかりやすい流行だけではなく、見えない流行がいろいろあるような気がする。
といっても「一部の人達内部での流行」(たとえば、「最近鉄道愛好家の中でインドネシアの鉄道車両がブーム!」)という感じのものではない。
もっと身近にあるんだけれども、消費側はほとんど気が付かない様なものである。

  

たとえば、制汗剤。
僕が中学生とか高校生の頃は、スプレータイプ(エアロゾル)が全盛だった。制汗剤売り場はほとんどスプレータイプで占められていたと思う。いやしかしなんで中高生はあんなに制汗剤を吹きたがるんでしょうねぇ。
二三年前は液体タイプが目立っていた。化粧水みたいな感じのボトルに入っているものが急に増えたように感じた。
そしていまはボールペンのオバケみたいな奴というか、先端にボールがついたノズル付きのボトルに入った液体タイプの制汗剤の広告をよく見る。(このタイプのボトルってなんて呼べばいいんだろうか。いつも説明に手間取る。)


液体タイプとボールペンタイプの間に一瞬スティックのりみたいな固体タイプがあったような気もする。

また、ペットボトルの形状なんかも実は変わってきている。
いつまでみられたのか定かではないのだが、昔ポカリスエットをはじめ清涼飲料水系のボトルでこういう形のボトルがよく使われていた。

「エネルゲン」っていうのがこのボトルだったと思う


どういうわけかお茶や水がこの形状のボトルに入っていた記憶が無い。
偶然昔のテレビ番組を見ていたらこのタイプのボトルが出てきて、「あそういえばこの形のボトル見なくなった」と思い出すことができたんだけれども、きっと思い出されることのないまま消えていったボトル形状は多数あるだろう。
(そういえば少し前の「ゲータレード」に代表される広口ボトルも最近見ないような。)

最後にガム。最近ガムといえば粒タイプか名刺入れみたいな箱入りタイプばかりだけれども、15年くらい前はガムといえば板ガムだったような。今でも板ガム自体は見るけれども、その地位はずいぶん落ちているように感じる。

こういうのを「流行」という言葉で表すかどうかは微妙なところではあるだろう。「流行」という言葉はやはり消費者が流行を意識して意思決定を行っている状況をさす言葉であるような気もするし。
でも、移り変わる理由が特にないのに変わっているというのは不思議な感じがする。制汗剤の形態なんて使いやすいものが残って使いにくいものが消えるだけですぐ収束しそうなものだし、ペットボトルの形状に至ってはほとんど変える意味が無いように思える。
意外と見える流行よりも面白いテーマかもしれない。


しかしこれを書いてて思ったけど、10年以上前の風俗(「 ある時代やある社会における、生活上の習わしやしきたり。風習。」のほうね)情報なんてことになるとネットでもほとんど情報が出てこない。インターネットの普及はなんと遅かったのだろうか。

死せる聲、失はれし音、忘れられし響よ、深遠に突入しつつあつて今更にこれを捉へんにはあまりにも遠ざかりし振動よ!……いかなる矢が、かかる鳥のむれに達し得ようぞ。(未来のイヴ)