世の中に何度読んでも面白い漫画はあるけれども(例:Cryingフリーマン)、面白いだけでなく読み返すたびに新しい発見を得られる漫画は「グラップラー刃牙」シリーズだけであると思う。
(ちなみに、今年新しく読んだのはCryingフリーマンとシティーハンターくらいでしょうか。)
※これからは「刃牙」と書いた場合は範馬刃牙という人物を、バキと書いた場合には「グラップラー刃牙」シリーズやその世界観を表す。
作中最も強さを追い求めている人物がジャック・ハンマーである。 「今日強くなれるならば明日はいらない」という言葉に現れているように、「日に30時間のトレーニング」とか常軌を逸したアナボリックステロイドの使用などその他の「強キャラ」たちを圧倒する強さへの執着を持っている。(ちなみにいうと、ステロイドは使ったらその場で強くなるものではないです)
「明日はもっと強くなれる」という刃牙とは正反対のアプローチだ。
というわりにはちゃんと睡眠はとってるみたいですね |
もちろんジャックに限らず、作中人物たちはみな強さを追い求めている。
しかし、その「強さ」が何なのかを理解しているのは範馬勇次郎だけであった。勇次郎以外にとって、追い求めている「強さ」は喧嘩に勝てること?なのか危険から身を守ること?なのかはっきりした答えはない。強さとは正体不明の「妖怪」なのである。
だからジャックたちはどれだけトレーニングをしようが技術を身につけようが勇次郎に勝つことはできない。
血が薄いからね、しょうがないね |
妖怪は名前を知られることでその力を失うというが、刃牙が勇次郎を超える「強さ」を手に入れたのは「強さ」とは何かを理解したからではないだろうか。強さの正体を理解することで強さを我がものとしたのである。
エア夜食はよくネタにされるけれども、あれはバキをちゃんと読んでいる人にとっては妥当な、というかこれ以上ないラストシーンだった。その後、範馬勇次郎が刃牙を「地上最強」と認め、刃牙がそれを返上するというシーンがある。ここに重大なパラドックスが存在している。
(続く)