秋葉原のメイド問題

この純潔な人たちは純潔そのものをも笑う。そして訊く、「純潔だって!純潔は、愚劣なことではないか?しかも、この愚劣なことも、我々がそれを求めたわけではない。むこうから、こちらへやってきたのだ。われわれはこの客に好意の宿を貸した。そこで、客はわれわれのところに泊まっている。気の向くだけ、いつまでもいるがいい!」
―『ツァラトゥストラはこう言った』


秋葉原にいる客引きのメイド(以外にもJKとかいるけど)について、割と自分の周りでは否定的なことをいう人が多い。
その理由は客引き行為そのものについて迷惑だという意見と、「メイド」について一家言ある系の意見に大別される。前者は別に秋葉原のメイドに限った話ではないので忘れるとする。
後者は客引き行為自体の是非といった部分はほぼ無関係で「お屋敷の中にいるメイドが街頭に立って呼び込みしてるなんておかしいじゃないか」※とか、「あんなミニスカートのメイドなんてありえんでしょ」といった意見があるけれども、あなたはどう思うだろうか?
※どーせ情報ソースは『エマ』だろ?と。日本にいるメイドについて詳しい人達の想像しているメイド像って本来のものとどれくらい乖離しているのだろうか。

  

自分も昔純潔だった頃(?)は否定的な立場だったんだけれども、最近は公的な意見ではないにせよああいう風景がいいと思えるようになってきているんですね。
もろに階級意識が出てしまっているような気もするけど、境遇を想像すると正直言って劣情をそそられる。この話はこれ以上深掘りするとアレなので忘れるとして、メイド産業の構造について考えてみよう。

そこには運営サイド・メイドサイド・客サイドみんながそれぞれ自分は相手を騙している気になり、逆に相手も自分を騙そうとしているのもわかっているけどそれをわかった気にもなり、というすべてが嘘の関係性のなかで空虚な楽しみを得ている、という構図がある。
メイドサイドは「この客すっごいキモいけど、お金のためだし笑顔笑顔」と思いながら接客しているのだろうし、客サイドも「メイド服着てニコニコしてりゃいいんだから楽な商売だよな~!頭のなか空っぽのくせしやがって」と思ってるだろう。そして運営サイドはきっと「バカなガキと冴えないオッサン、どちらもせいぜい俺様の養分として頑張ってくれや」という感じだ。(ちょっと穿った見方すぎるだろうか?)

最近こういう嘘で成り立ってる話のほうが「純愛もの」なんかよりずっといいと思う。

地下アイドル業界も似たような構図なんだと思うんだけど、地下アイドルというのは噂でしか知らないのでこまかいことはわからない。けれどもあれが地上アイドルの存在があっても成立する理由っていうのは客側に「もしかしたら自分でもお近づきになれるかも??」という幻想をうまくもたせることができている点なのではないだろうか。

先日、元アイドルグループの少女(多分地下アイドル)がファンの男性とラブホテルに入っていくところを見られ、「恋愛禁止」ルールを破ったことで解雇され、さらにはグループが解散に追い込まれたことで生じた損害賠償請求までされたのだが少女側はそれを不当だと訴えている、というニュースを見た。門外漢にとっては「芸能界ってやっぱそういうところなんだ。怖いな~、とづまりスト4」という話だけど、ドルオタにとっては「地下アイドルって本当にそういうことができるかもしれないんだ。自分も頑張ってみよう」と奮起させる宣伝材料になっているような気がしてならない。
こうやってますます欲望は加熱していく。

メイド産業もアイドル産業も準性産業なわけだけれども、地上アイドルはそれを隠蔽しているところがどうもダメなのか苦手。(地下アイドルにも興味はないけど、こっちのほうはまぁ好きにやってくれという感じではある)
メイド産業はそのことを全員了解の上で「忘れたフリ」をしているところがなるほど大人の娯楽だなぁと思うようになってきた。

という話を一番気が合うと思ってた友達にしたら、あまりにも下衆いと引かれてしまった。悲しいなぁ…(諸行無常)