冠婚葬祭の引き出物といえば、カタログギフトが定番である。
送る側は価格さえ決めればあんまり頭を悩ませなくて良いし、もらう側も「これが今まさしく欲しかったんだ!!」ともらって超嬉しいものをもらえることはなくとも、タダだったらこれほしいなというのはだいたいある。 なので変なお皿とか画一的な物をもらうよりはよっぽどうれしい。 ちなみにこの記事を書いているのはもちろんカタログギフトを直近でもらったからなのだが、今回は最近公園などでよくみるテント型サンシェードを申し込んだ。
こんなやつ。車に載せておこうと思う。
さて、そんなことはどうでもよいので、早速本題に入ろう。こういうタログギフトを見て気になることがあった。
だいたいお目にかかるようなカタログギフトは3000円とか5000円とかくらいのものなのだろう、当然ハイブランドの商品なんてものは載っていない。 でも、バッグとか財布とかのコーナーを見るとブランド物だと言い張っている商品がたくさん並んでいる。
基本的には聞いたことないものばかり、たまにピエール・カルダンとかライセンスを安売りしたことで有名な名門ブランドも出てきたり。 こういったブランドって一体誰が作ってどういう経緯でカタログギフトに載るような商品がそのブランドから出ているのかずっと不思議だった。
そのなかでも僕が気になって調べてしまったのがH.L COTE D'AZUR(アッシュエル コートダジュール)というもの。カタログギフトにはだいたい載っている、常連的なやつだ。
カタログギフトにしか出てこないわけではなく、Amazonや楽天で商品を見つけることもできるし、全国の百貨店でも取扱があるようだ。 また、ネット記事にはなるがファッション誌に商品を取り上げられてもいる。
このブランドは名前からしてフランスだし、一応名前の由来になっているのはHenli luc Chapuisというフランス人デザイナーであるようだ。 そのはずなのだが、このブランドはとにかく探しても日本語の情報しか出てこない。
このブランドの商品を生産・輸入しているのはこれらの企業。
カタログギフトでよく見るブランドを多く取り扱っている「エルシオン」
百貨店にもH・Lの商品を卸している「日登美株式会社」。
そして「東レディプロモード」という東レの子会社。
どこが大本なのかと思って商標検索にかけてみると、東レディプロモードが1980年代にいくつも登録している。
どうやら東レディプロモードが大本のライセンスを持っていて、各社それをサブライセンスしているということなんだと思う。
ちなみに先程、H・Lなんてブランドの商品は日本語情報しかない、ということを書いたが、実はわずかに日本語以外でもネットオークションサイトなどが出てくる。
このリンクいつまで生きてるかな…。
これは1980年に生産されたものであるそうだ。東レディプロモードが商標を取る前のものなので、日本企業のライセンス生産品ではないと思われる。
ここまで手に入った情報をもとに、H・Lの正体について考えてみよう。
かなり推測になってしまうのだが、このブランドはおそらく1980年代にはたしかにフランスのデザイナーブランドとして存在していたのではないだろうか。 そしてそのころバブルにわく日本からやってきた東レディプロモード(かその前身)がそのライセンスを取り、さらにサブライセンスを多数の企業に与えて日本企業がH・Lの名前で商品を作りはじめた。 大事なこととして、本家のH・Lはライセンス先に対してあまり関与せず、ほんとに名前だけ貸してあとは頑張ってねというスタンスだったに違いない。
しかし事件は起きるのだ。インターネットが一般に広まる前に本家H・Lは業績不振により廃業してしまう。 もとはフランスブランドの虎の威を借りるために手に入れたライセンス、本家がなくなってしまったら本来は無価値なはずだ。 しかし、もとより借りていたのは名前やロゴだけでデザインは自分たちでやってきたし、ブランドもそこそこ認知され育っている。 ここでみすみす捨ててしまうのはもったいない、もう自分たちだけで続けてしまうか、となっていったのではないだろうか。
そして本家のいないブランドがうまれたわけである。※
裏のとりようはないわけだが。
日本のアパレルのライセンス事情って複雑だなぁって思うのと、30年前のことを調べようとするとインターネットって無力だなと思った。
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※自転車業界でも本家がほぼなくて、日本企業が実質本体となっているブランドがある。GIOSとか…。