攻めるためのインフラ産業とそこにある危機

Uber EATSを利用したことはあるだろうか。

わかりきったことだが一応振り返っておくと、自前で出前(ラップじゃないよ)サービスを持たない飲食店からフリーランスの配送員が料理を宅配してくれるというものである。 飲食店側は売上の一部を引かれるだけの従量課金なので出前要員を雇って固定費を払う必要もない。 配送員側も好きな時間好きな場所で働くことができる。現在はほんとに一部都市しか対応してないけど、そのうち各県庁所在地や政令指定都市は全部対応、って感じになったら旅しながら働くこともできそうだ。

もともと宅配グルメに関する日本のローカルサービスでは出前館というのがあったが、もともとこちらは単なるポータルサイトであって実際に宅配を行うのは各店舗だった。 今はUber EATSのように出前館の配達員というのがいて、店舗側は宅配サービスがなくてもよくなるサービスもやっているようだ。


今では席を持たず宅配専門のレストランというのも出てきている。今後軽減税率とかいう愚かな政策のおかげで出前ビジネスは追い風が吹いている。

エンドユーザーが直接触れることはないのでUber EATSほど知名度は高くないが、Amazonフルフィルメントというサービスがある。

Amazonの倉庫を一部間借りして、そこに商品を保管できるのみならず注文〜配送〜返品といった物流系を全部面倒見てくれるというものである。 (出品者がAmazonじゃないのにAmazon発送の商品はこれだと思われる)

自分で商品を作れるか、目利きができて売れる商品を輸入できる人はこれを使えば物流部分は全部マネージドでAmazonにまかせて自分は生産や輸入に専念できる。

たしかこの本にくわしくのっている↓

amazon 世界最先端、最高の戦略

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こういうのって、私企業によるサービスではありながらかなり公共性を持っている。


一旦話は変わってゴミについて考えてみる。現代、人間の活動はゴミを出すことなしにはなし得ない。ましてや商活動においては。 仮にすべての人や会社が個別に出したゴミを処分しなさい、となったら本業とは関係ないところで出費を強いられることになる。

でも、ごみ処理というのはだいたいやることが決まっているし、個別にやるよりまとめてやったほうが効率が高い。だからみんなから税金という形で薄くお金を集めて巨大なゴミ処理場をたて、ゴミ収集車を走らせる。 行政がゴミの処理を提供することで、その地域でビジネスを展開するのがやりやすくなるわけだ。

前述のUber EATSしかりAmazonフルフィルメントしかり、商売を自分でやりたい人に本質的じゃないけどやらなきゃいけないこと/やったほうがいいことを提供することで商売を小さく始めやすく&小さく始めても多くの人にリーチできるようにするという点ではもうゴミ回収サービスと同じくらい公共性が高いように思う。

日本ではブロックされているけど本家Uberも都市の半公共交通機関となりつつある。Uberがある都市に展開するとその都市の交通網が強化され都市として魅力が高まるわけだ。

こういったものは行政サービスに加えて電気・ガス・携帯キャリアといったものに次ぐような準インフラ産業といってもよいように思う。

で、やっぱり問題なのはそこを国外の企業が握っているというところだと思う。そこが儲かっているということは、日本から富が流出しているということになる。 ふるさと納税で東京から税収が逃げていって富が流出しているのと同じように、日本から富が流出しているわけだ。もちろん新しいビジネスが生まれて富が創出される効果があるのも事実だが。

こういう「インフラ」の再発明という発想、ITの世界ではもっと先行されている。日本の「レンタルサーバー屋」というのはほんとにただサーバーを借りられるというだけでそのうえに乗せるものは知らないですねというところばかりだ。月額いくら払ってくれたらこれだけはやりますよあとは知りませんという態度だ。 たとえばさくらインターネットのサービス一覧は1枚のページに収まっている。

www.sakura.ad.jp

一方AWSやGCPといったところは色々こんなのあると便利でしょう、みなさんのビジネスにとってはこんなところに煩わされるのは本質的じゃないですよね、我々が代わりに作っておきあました!ととてもホスピタリティが高い。 ほんとに小さいサービスのうちから自分たちの運営するプラットフォームを利用してもらい、もろもろ便利なやつらを利用してたくさん儲かる大きなサービスに成長してもらう。 そうなったときにはたくさん料金払ってねと二人三脚で進んでいけるようになっている。 (その代わり進めば進むほど二人三脚をほどきづらくなっていく)

ホスピタリティが高いのは決して優しいからじゃなくて、自分たちのプラットフォームが世界を独占して誰もが逃げられないようにするためなのではあるが、それでも利用者側としてはホスピタリティ高いなと感じてしまう。

さきほどとの対比としてAWSのサービス一覧。

aws.amazon.com

このまま行くと役所に限らず、日本の企業が「お役所仕事」をしている間に本物のホスピタリティを見せてくるグローバル企業が日本のインフラ産業にガッチリ食い込んで、その上での商活動からどんどん上前をはねていくことになる。

本当に徐々に植民地にされつつあるのかもしれない。

<帝国> グローバル化の世界秩序とマルチチュードの可能性

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