イタリア発の分散型ホテル、アルベルゴ・ディフューゾとは

アルベルゴ・ディフューゾとは

図書館にて、タイトルが気になって手に取った「CREATIVE LOCAL: エリアリノベーション海外編」という本の中で、「アルベルゴ・ディフューゾ」というものが紹介されていました。

これはイタリア語で、日本語に直すと「分散ホテル」となります。

通常、ホテルといえばレセプションも客室もレストランも、一つの建物の中にあります。しかし、アルベルゴ・ディフューゾではそれらが町中に分散しています。

空き家となっている家などを客室、地元の食堂をレストランとし、街の中にホテルの機能を分散させることでその地域の伝統的な「暮らし」に溶け込む感覚を得られるような宿泊体験になっています。

画像引用:アルベルゴ・ディフューゾ・ジャパン「アルベルゴ・ディフューゾとは?」(https://albergo-diffuso-japan.jp/about/)より

また、単に寝る・食べるだけでなくその町の特色に触れる:たとえば町の伝統工芸などを体験する(もちろん場所は町中の工房など)ことを含むツアーとしての宿泊体験を提供することが多いようです。

アルベルゴ・ディフューゾが生まれた経緯

アルベルゴ・ディフューゾが生まれたきっかけは1976年に発生したフリウリ地震。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%25E3%2583%2595%25E3%2583%25AA%25E3%2582%25A6%25E3%2583%25AA%25E5%259C%25B0%25E9%259C%2587

このころのイタリアでは、今の日本のように地方の人口流出により各地が衰退していたそうです。(EUができたことによってでしょうか、今はイタリア人が「上京」するとするとドイツなどもっと稼げる国に行ってしまうそうで、むしろ今は農村より都市のほうが人口増加率が低くなってしまっていると最初に紹介した本にかいてありました。数字は見つけられず。)

衰退する地方を再活性化する方法はないかと、現在アルベルゴ・ディフューゾ協会の会長であるジャンカルロ・ダッラーラという人が思いついたそうです。

それからしばらくたって、1995年にその構想が具現化し、今に至ります。

アルベルゴ・ディフューゾ協会

ひとつ注目すべきは、アルベルゴ・ディフューゾは、単に試みを真似すれば名乗って良い、というものではないというところです。(とはいうものの、名詞的にも一般的なので勝手に名乗られたとしても変えさせることは難しいようですが。)

ただ単なるアイディアで終わらせず、「アルベルゴ・ディフューゾ」が価値を持ち続けるようにブランドマネジメントを行っているところは、世界中で憧れられる高付加価値のハイブランドを生み出した商売感覚と通じるところがあると感じます。

先程名前が出てきたアルベルゴ・ディフューゾ協会は、アルベルゴ・ディフューゾにあるべき要件として、

「ホテルが提供するようなサービスはすべて備えていないといけない」

「すべての施設は歴史的な地域になければならない」

「すべての施設はレセプションから半径 200m圏内になくてはいけない」

といったものをいくつも設定しており、それらを満たしたものがアルベルゴ・ディフューゾ協会認定のアルベルゴ・ディフューゾとして登録できるようになるようです。

参照: http://www.stratech.it/uploads/AlbergoDiffusoENG.pdf

また、アルベルゴ・ディフューゾは「ビジネス」であり、利益を生み出さないと持続可能ではないということを明言しています。

アルベルゴ・ディフューゾの広がり

現在イタリアでは100箇所以上、ヨーロッパまで広げると160箇所以上のアルベルゴ・ディフューゾが存在します。

ヨーロッパ外だと、日本がアジア初のアルベルゴ・ディフューゾとして岡山県小田郡矢掛町の 矢掛屋 INN&SUITESが認定されています。

http://www.yakage-ya.co.jp/

また、日本にもアルベルゴ・ディフューゾ・ジャパンという団体がありこちらはイタリア外で初めてのアルベルゴ・ディフューゾ協会になるようです。

アルベルゴ・ディフューゾは日本で根付くか

アルベルゴ・ディフューゾは、日本の旅館をヒントに作られたらしいです。

アジア初のアルベルゴ・ディフューゾが日本だったり、協会ができていたり、日本のアルベルゴ・ディフューゾに向ける視線はなかなかホットなようです。

しかし、アルベルゴ・ディフューゾが日本の地域創生に役に立つか?と言われると、多くの町ではならないのではないでしょうか。

ヨーロッパでは、石造りの家を数百年住み続けるのは割と当たり前です。石なので、数年空き家になっているくらいでは対して問題になりません。しかし木造建築はわざわざメンテナンスしないかぎり、放っておくとすぐだめになってしまいます。

アルベルゴ・ディフューゾが歴史ある木造建築がきちんと維持管理されている地域となると、かなり限られてくるように思います。すでに観光客がたくさんやってきている地域でないと、なかなか難しい。(弘前の武家町あたりは実現できたらとても魅力的になりそう、、)

また、地域創生といった言葉と一緒に紹介されたということで、利益を生むためのビジネスであるというアルベルゴ・ディフューゾの本質が見落とされて、行政の新しいハコモノのネタにならないかというのも心配です。

イタリアのように、規模は小さくても世界に対して自分たちの町を売りこんできちんと利益を生むために真剣に取り組まない限り、アルベルゴ・ディフューゾとは名ばかりのただの空き家をリフォームしたホステルのようなものになってしまいそうだな、と思います。

なにはともあれ、アルベルゴ・ディフューゾ・ジャパンがアルベルゴ・ディフューゾの本来の姿をどれだけ認知されられるか、にかかっているのではないでしょうか。


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