結婚式で写真を撮るのは礼儀です

先日、人の結婚式・披露宴に出た。

披露宴のテーブルにつくと、Google Photoの共有アルバムへの招待リンクQRコードが印刷された紙が置かれていた。 参列者に撮影した写真をアップロードしてくださいね、という呼びかけのようだ。

結婚式での撮影スタイル

この共有アルバムがどれほど使われたのかはわからないが、結婚式はとにかく写真が撮られる。

披露宴の入場シーン、ケーキ入刀のシーン等々、みんな同じ場所に集まって、直立で撮影。 ほとんど同じような日の丸構図で、「写真」としては面白みのない写真が量産されている。

会場ではプロカメラマンたちがプロ用のカメラでプロのテクニックを使って撮影をしていて、後からそれを見ることもできる。 だとしたらクリエイティブ的な観点から言えばほとんど無意味な行為をしているとすら言える。

目の前でリアルな世界があるのに、撮影のためにスマホの小さな画面越しにながめる。 僕が逆の立場だとしたら、写真に夢中になってないでその目で見なさいと思う(かもしれない)。 (花火とかでも思うんだよね、、)

写真を撮る行為の意味

この光景を見ていて、スマホ普及以降の「写真を撮る」という行為が果たす役割が変化しているのでは?と思った。

人の結婚式に行ったという思い出ということで記憶のための記録を残すために撮っているということもあるだろう。

けれども、自分の結婚式でもないのにいろんなシーンを事細かに、その割には構図の工夫をするでもなく棒立ちで写真を撮りまくるというのはフィルムカメラでの写真撮影の延長として考えるだけでは捉えきれない現象だと気づいた。

インターネット上の人の行為≒コンテンツの作成に対しては、「いいね」ができる。

現代社会における写真をとることは、現実世界の行為の「いいね」可能なインターネット上の表象を作り出すことなのではないか。

さらに言うとその変換そのものが、「あなたの行為はいいねされるに値する行為です」と表明する、実質的な初「いいね」をすることでもある。

これは、「カメラ」が「インターネット接続可能なスマホ」に搭載され、「いいね機能のあるSNS」が世の中にあるという3つの自体が複合した結果作られてきたノルムである。

このノルムのもとでは、他人の結婚式に行っておいてスマホのカメラを向けないとは失礼とすらされているのだろう。

Twitterの「お気に入り」はなぜ「いいね」になったのか

かつてウェブブラウザのブックマークは、意味どおり有用な情報をあとから見直すための機能だった。 ブックマークがソーシャル化したことで、ブックマークはブックマークする人の備忘録ではなく、他人のためのメッセージとしての側面が強くなってくる。

2008年からあるTwitterのお気に入りは、2015年にいいねとなった。

この背景を説明したTwitter社のブログ記事がある。

blog.twitter.com

ポイントとなるのは

このアイコンがさまざまな感情の場面でクリックされることを想定した時に、星よりも幅広い感情を表しやすいハートの方が使いやすいと考えました。

の部分。 ブラウザのブックマークを想起させる「星」ではなく、感情を表すための「ハート」への変化なのである。

Twitterは元々マイクロブログなんて呼ばれていたし、後で投稿を呼び出せるために「お気に入り」機能を作ったんじゃないかと思われる。 しかし実際に起こっていたこととしては「お気に入り」機能は後から見返す整理のためではなく、ある投稿にその場で評価を与えるためのツールとして用いられた。 (上記のツイートへの返信を見るとややこしいことに、ハートでもいいねでもない名前がついていたことで、色々な意味を込められていたのが良かったらしい。)

Twitterの「お気に入り」機能が「いいね」機能になり、星マークがハートマークになった際にはかなり反発があったらしい。

「お気に入り」の星を意図的に誤用することで色々な感情を表現してきたTwitterムラの人たちにとっては、誤用によって作れていたその他SNSの「いいね」とは違うコンテクストが失われるということで嫌がったのではないだろうか。

Twitter以外のWebプラットフォームにおける星マークとTwitterの星マークの使われ方が違うというのはTwitterムラの文化を知らない人にとってはわかりづらいし、Twitterにとっては必要な決断だったんだろうなぁ、と思う。

ちなみに、Facebookの「いいね」は、2009年からあるらしい。

facebook-docs.oklahome.net

記憶から感情表現へ

突然脱線したように思うかもしれない。 写真は「お気に入り」から「いいね」へと変化した、と言いたかった。

記録に残してあとで振り返るためのツールとしての役割よりも、その場限りの感情表現のツールへとメインの役割が変わっているのである。

(余談)がんばれOMデジタルソリューションズ

余談ながら、参列者の中で二人だけスマホではなくカメラを使っている人がいた。 ふたりとも僕の「推し」ているOMDS(オリンパス)のカメラを使っていたのだが、ふたりともキットレンズを使っていた。

OMDS(オリンパス)にせよパナソニックにせよMFTのカメラを使っている人自体はいるのだが、そのキットレンズ使用率が著しく高いように思う。 エントリーモデルを持っている人に他のレンズに興味を持たせる顧客育成に力をいれないといけないんだろうなぁ、と思った。

まずは一個、単焦点レンズかってみませんか?と言いたくなった。

k5trismegistus.me

とりあえず一本どうでしょう。