なぜバイエルンとPSGの一人勝ちは許されるのか

前回は、日本のサッカーファンがなぜ「技術委員」のようにになるのかを考えた。

今回は、以前から気になっていた別の疑問について。

なぜ欧州サッカーのリーグは、いつも同じチームが優勝するのが許されてるのだろうか。

優勝の独占 寡占

直近20シーズン(2006-07〜2025-26)の優勝国を見てみよう。

ドイツのブンデスリーガは、バイエルン・ミュンヘンが20回のうち15回優勝。

フランスのリーグ・アンは、パリ・サンジェルマンが20回のうち12回優勝

スペインのラ・リーガは、20回のうちバルセロナ11回、レアル・マドリー7回ずつ優勝。

他チームのサポーターは、こんなんで応援するモチベーションが維持できるのだろうか。

アメリカのプロスポーツとの対比

アメリカのプロスポーツには、戦力均衡のための制度が存在する。

ドラフト制度

弱いチームほど有望な若手を獲得しやすくする。

サラリーキャップ

資金力だけでスター選手を集め続けられないようにする。

MLBは完全なサラリーキャップではないが、競争均衡税(Competitive Balance Tax)によって極端な戦力集中を抑えようとしている。

世界一はどこで決まるのか

ここまで調べて、一つの仮説を思いついた。

アメリカの3大プロスポーツ、アメフト バスケ 野球はどれもアメリカのリーグこそが最高峰であり、比較されるようなものがない。 リーグそのものが世界最高峰である。

だからリーグで優勝すれば世界一というシンプルな構造であり、リーグの外には競争相手がいない。

しかし欧州サッカーは違う。

ヨーロッパには、国内リーグとは別に、各国リーグの上位クラブだけが出場できる欧州大会がある。

代表的なのがUEFAチャンピオンズリーグ(CL)で、そのほかにもUEFAヨーロッパリーグ(EL)、UEFAカンファレンスリーグ(UECL)がある。

そしてUEFAは、これら欧州大会の結果をもとに「協会係数」というランキングを公表している。

ランキングが高いリーグほど、翌シーズンの欧州大会へより多くのクラブを送り込める。

世界最高峰のリーグという名誉もある。

現在の協会係数では、

  1. プレミアリーグ
  2. セリエA
  3. ラ・リーガ
  4. ブンデスリーガ
  5. リーグ・アン

という順番になっている。

「農民リーグ」という言葉

ブンデスリーガやリーグ・アンは、おもにプレミアリーグ所属クラブのサポーターから “Farmers League(農民リーグ)” と揶揄されることがあるそうだ。

由来は2説あるようで

  1. 農民が片手間にサッカーをしているような低レベルなリーグ

  2. バイエルンやPSGが勝ち点を「収穫」するだけのリーグ

https://www.reddit.com/r/PremierLeague/comments/16pvfgr/comment/k1tov9b/

これを象徴的な出来事が、PSGのチャンピオンズリーグ初優勝時に起きている。

欧州制覇を果たしたあと、ルイス・エンリケ監督は「私たちは農民リーグだからね」と皮肉で応じた。

あれはPSGだけへの揶揄ではなく、リーグ・アン全体への見下しに対する意趣返しだったのだろう。

戦力均衡を取れない理由

もしブンデスリーガだけがドラフト制度を導入したらどうなるだろう。

有望な若手もスター選手も、より自由に戦える他リーグへ流れていくだろう。

バイエルンも欧州大会で勝てなくなり、UEFA協会係数も落ちる。 欧州大会の出場枠も減り、リーグ自体の名誉・人気にも影響するだろう。

つまり、一つのリーグだけが戦力均衡へ舵を切ることは、自分たちだけが不利になる可能性がある。

欧州サッカーは、戦力の偏りを構造上、変えられなくなってしまっているのではないか、と考えた。

欧州サッカーの制度

「欧州は何も対策していない」というわけではない。

例えばUEFAにはFFP(現在はFinancial Sustainability Rules)がある。

ただし、これは戦力均衡を目的とした制度ではない。

クラブの収入に見合わない過剰な支出を防ぎ、健全経営を促す制度である。

結果として、既に大きな収入基盤を持つビッグクラブの方が有利になりやすい、という指摘もある。

ドイツには「50+1ルール」もある。

クラブの議決権の過半数をクラブ会員が持つことで、外部資本による支配を防ぐ制度だ。

こちらも目的はクラブ文化や地域性を守ることであり、戦力均衡ではない。