お題「#おうち時間」
最近話題の「絵しりとり」が回ってきた。「おうち時間」で楽しめる娯楽として流行っているということだろうか? #stayhome というタグと一緒に投稿されていることが多いようだ。
自分の作品がこちら。
あ、ちなみに"k5trismegistus"というアカウントでInstagramをやっていました。
絵しりとりとは何かというと、Instagramのストーリー上で、絵を使ったしりとりをするというものである。
指名されたら、指名されたストーリー画面をスクショにとり、その画像をストーリーに貼り付けて縮小。余白に回答となる絵と次に誰を指名するかスタンプでメンションを飛ばすというものである。
とまぁ、詳細をくどくど書いてみたはいいけれども、回ってきたときはまだ知らなかった。
けど、画面を見ているとなんとなくルールが見えてくる。
実をいうと、この回しているひとたちがマルタで知り合った人たちだったのでてっきり英語でやっているものだと思いこんでいて、Muscut →Tomato ときてOctopusの絵を書いていたのだが。。 Mic → Car ???m → Muscut →Tomatoかなぁと。
もちろん、実際はマイク→くるま→マスカット→トマト。意外と「と」から始まる事物を絵で書くのが難しいなぁと思ったのでトム・クルーズにした。
もちろん、前提知識として表記体系を持つ言語を共有していたから成立した遊びではあるのだが、にしても画面からルールを読み取って(ルールブックを読まずに)継続するというのは我ながら面白い現象だなぁと思う。
- 作者:ルートウィヒ・ウィトゲンシュタイン
- 発売日: 2010/11/12
- メディア: 文庫
- 作者:ルートヴィヒ・ヴィトゲンシュタイン
- 発売日: 2013/08/30
- メディア: 単行本
ウィトゲンシュタインといえば「語りえないことについては人は沈黙せねばならない」という一節が知られる「論理哲学論考」が有名だが、残念ながら僕はこれは読んだことがない。これは「初期」ウィトゲンシュタインといわれるものである。
一方で、中期・後期といわれる「青色本」や「哲学探求」は読んだことがある。この中で紹介される「言語ゲーム」という概念がある。決してもじぴったんやクロスワードのような言葉をつかったゲームのことではない。
詳しく知りたいぞっていう人は下がおすすめ。
http://www.phenomenology-japan.com/witasako.htm
言語ゲームのエッセンスは「語の意味とはその使用である」という言葉で表される。その場で使うに適切な言葉は、周囲のシチュエーションによって規定される。しかしその規定はどこにも明確なルールブックとして定められているわけではなく、周囲がどのように使っているかを観察し、「なんとなくこうかな…」と学んでいくことになる。
今回の絵しりとりはこの状況と類似していないだろうか。
しりとりが繰り返されているイテレーションが3,4回分視認でき、それを継続することを求められているということが画面から伝わってくる。それを見て、各イテレーションで何が行われているかを観察することでルールを読み取り、そのルールにのっとった行動をする。
先程のリンクに
私たちはどのように規則を「理解する」のか。言語ゲームという場に定位して考えるかぎり、次のように言わざるを得ない。わたしたちは、“有限回”の経験からそのゲームの“一般則”を理解する、と。(たとえば、「2、4、6、8、10、12・・・」と続く数を見ていて、ある時点でその数列を理解し、「以下同様に」続けていける(=規則に従うことができる)と確信する。「14、16、18・・・」といった具合に。)けれどもここで、規則に対する懐疑主義が生じうる。≪“有限回”の実践から、そのゲームの確定的な“一般則”を理解したとはいえない。それは権利上、無限の「解釈」を許容する。するとどんな行動も規則と一致することになり、そもそも規則への一致も矛盾もないことになるのではないのか≫、と。
という部分があるが、まさしく「有限回の経験を一般化」しているわけだ。
しりとりのルールは明確にこれというものがあるわけではなく、口伝でなんとなくつたわっているだけである。 「相手が言った単語の最後の文字を最初の文字にする単語を言う」なのか、「相手が言った単語の最後の音を最初の音とする単語を言う」なのか。日本語でしりとりをする以上、どちらのルールも等価ではある。 お互いがそれぞれ違うルールをしりとりのルールとして認識していたとしても、ゲームは表面上つつがなく進行するわけである。
しりとりは言語ではないわけだが、言語がコミュニケーションの手段として成立することと、しりとりが複数人が参加できるゲームとして成立することの間には通じるものがあるなと思った。それこそ「家族的類縁性」が。
ちなみに、言語について考えるときは、次の記事でも紹介した
- 作者:川添 愛
- 発売日: 2013/04/18
- メディア: 単行本
シリーズがよいかもしれません。