先週金曜日、Plasma #2というイベントに行ってきた。
そもそもPlasmaとは
Ethereumのスケーラビリティ問題の解決策としてEthereum CreatorのVItalik Buterin氏と、Lighthing Network Author のJoseph Poon氏によって考案されたPlasma。
のことである。
簡単に言うと、Ethereumのメインチェーンとは別にPlasmaチェーンという別のチェーン上でトランザクション処理をする技術である。
@_sgtnさんの発表
そのイベントで、@_sgtnさんの発表をきいて思ったことを書いてみる。 ちなみに登壇資料はこれ。
この発表の47ページからの話が気になった。
- pBFT(Practical Byzantine Fault Tolelance)
- PoWだとかのように、不特定多数のノードたちによって合意形成するのではなく、信頼できるノードの合議制。普通の?分散システムとも言えると思う
- HTLC(Hashed Time-Locked Contract)
- LightningやRaiden Networkの基礎となる、オフチェーンで仮想通貨やトークンをやりとりする 際に安全性を確保する手法
- Griefing Factors
- 攻撃者が他者の持っている価値を失わせる場合に、自分がいくら失うかを表す比率。たとえば、自分が1ETH損するけどAのもっている3ETHを失わせることができる場合、GFは3となる。
- Nakamoto Concensus
- ビットコインのシステムで採用されている、「長いブロックチェーンを信頼する」ということによって到達できる合意。
以上の4つを「Cryptoeconomics」という言葉でまとめているところである。
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↑の古いので勉強してたけど、新版でたみたい。
Cryptoeconomicsの本質とは
けれども、そこに共通するものがなんなのかわからなかったので、交流タイムに直接聞きに行った。
@_sgtnさんの答えとしては「プログラマブルなインセンティブ」ではないだろうかということだった。 例に上げていたのがLightning Network。自分なりに解釈し直して言うとこんな感じ。
もし現金をAさんがBさんに渡そうとする。このとき直接Bさんに会いにはいけないので、間で何人かに中継してもらうんだけれども、その人達は全員顔も名前も住所も何もわからない人たちだったら、無事にBさんにとどくことはないでしょう。(合理的に考えれば、途中で誰か盗む。だって中継者が盗んでも絶対にバレようがないから) でもLightningだったら、間にいる人達はシステム的に悪いことができないようになっている。
これによって、悪意を持った人がいるという想定を参加者が想定しなくて良くなるところがいいよね、という話だった…と僕は理解した。 つまり、悪意を持った人が悪さをする余地をブロックチェーンと技術者が排除しておいてくれるし、それ以外にもお金の流れが自動化されるのでその上で経済活動をする人たちが余計な心配することなくやりたいことに集中できるのが素晴らしいという話だった。 (そういえば売掛金の回収とかもスマートコントラクトになればいらなくなる。)
僕の考えでは、Cryptoeconomicsのコアとなる部分とは各ノードは利己的に振る舞っているだけなのに全体として1つの合意に向かうことができる「創発」にあるのではないかと思ってたが、いろいろな考え方があるんだなぁと思った。
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僕が大学・大学院時代にいた研究室がそういうのを専門にしていたからひっぱられているのかもしれない。
Cryptoeconomicsについて中の人の見解
イベント後あらためてCryptoeconomicsについて考えるために、Ethereum公式?の動画を見てみた。ジムで自転車こぎながらだったので半分くらいしか理解してないけれども。
見ていてわかったんだけれども、Cryptoeconomicsという言葉についてちょっと誤解していた。 Economicsは経済を指していると思っていたんだけど、どうやら経済「学」にあたるらしかった。 このため、僕はCryptoeconomicsという言葉を「暗号通貨が実現する経済システム」を指す言葉と思っていたのだが、この理解はすこしずれていた。。
総括すると、Cryptoeconomicsという言葉は暗号学(Crypto)と経済学(Economics)を組み合わせて、アーキテクチャ的にもインセンティブ設計的にも参加者が不正をせず、善良に振る舞うようにするにはどうしたらいいのかに関する学問をさすといえるだろうか。
余談
PlasmaチェーンはEthereumチェーンとは別のノードによって分散処理されるので、場合によっては数ノードしか無いとか簡単に攻撃可能なものがあるかもしれないとのこと。