自分の自動車に乗るようになってから、「道ってすごいな」と思うようになった。
いくらロードバイクにのっているとはいえ、自動車で移動可能な距離と自転車で移動可能な距離は桁が違う。いままで最も長く自転車で移動したのは広島空港から今治までであるが、やはり自転車の移動は「本気で自転車で旅をするぞ!」とならない限り出発都市から隣の都市レベル。 いくつもの街を通り過ぎて…というのはなかなか経験できない。
陸が続いている限り、道っていうのは全部つながっている。 自宅前の見慣れた道が、日本本島中どこにでもつながっているというのはすごい話である。
さらにいうと、広州で肉まんを買食いした道からアイス売に翻弄されたイスタンブールの道、ウィーンからの電車が遅れに遅れて夜中が夜中になり、襲われないか不安になりながら歩いたプラハの道も全部つながっていたということを改めて気が付かされた。 すべての道はローマに通ずというが、すべての道がローマにつながっていたとしたら当然道のあるところ同士はかならずルートが存在することになる。
そんなこんなで最近は道に強く興味を持っており、日本の道路の歴史の本を読んだりしてみている。
駅路というのが中央集権国家が地方まであまねく意向を伝えるための道具として作られ、中央集権制の崩壊と地方分権の進行によって廃れていった歴史が面白いなぁと思った。
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こういう今の「国道」に相当するような大きな街道ではない生活道路の歴史も気になるのだが、そちらに関してはあまり参考になりそうな資料がない。
建物と道を区別して「区画」というものができたのはいつなのだろうか。実はここを分けたっていうのも大きな発明なのでは?と思う。 「弥生時代 集落」で画像検索して出てきた予想図をみてみるとこんなかんじ。
外と集落の境こそあれ、その中は区画化されず未分化である。いつから今のように中央から周縁まで区画化されてしまったのだろうか。
話を戻すと、、
古代道路においては、道をつくるだけでは不十分でその上に駅伝制があることが重要だ。 高速に移動するには、定期的に馬を乗り換える必要がある。 (ちなみに、小伝馬町とか大伝馬町といった地名は駅伝の「伝」である「伝馬」に由来する)
同様の制度はモンゴル帝国、イスラム帝国、オスマン帝国などにも存在していたようだ。
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インターネットはおろか電気そのものがない時代、メッセージは直接届ける必要があった。そのためには届ける場所がわからないといけない。 住所という概念がいつから生まれたのかわからないが(〇〇京ができれば「何条何大路」で指定できるからそのころ?)情報技術における最初の発明と言ってもいいかもしれない。
人類が次に手にした住所は、「電話番号」だと思う。この電話番号はまた革命的な点があって、番号の割付が恣意的であるという点が住所と違う。 日本の電話番号は市外局番-市内局番-加入者番号というふうになっている。市外局番と市内局番は地理的に近いものが同じという住所と同じ仕組みをとっているが、加入者番号は区別がつければなんでもいい。1234の隣が8763でもいいわけだ。というより、二次元の延長で考えないので隣というのがない。
インターネットのIPアドレス・URLというのもこの延長であると思う。階層構造とリゾームのハイブリッドというか。
そして今最後に手にした住所こそ、ビットコインのアドレスであると思う。
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ついに、完全に階層構造を持たないリゾーム時代の住所を手にしたわけである。
これまで、住所というのは中央集権的な管理主体が決定して与えてくれるものであった。古典的な住所は政府が決めるし、電話番号はNTTが決める。(であってるよね) インターネットの場合はドメイン部分を決めるインターネットの部分とそれ以下の部分を各サービスが決める。
しかしビットコインのアドレスは、管理者がいない。イメージの話でいうと、我々が住む世界とは違う世界に「すでに存在する住所」があるという感じだと思う。 先程紹介した匈奴の本では、近代以降遊牧民は定住を基礎とする近代国家制度のもとで多くの不利益をうけてきたが、最近スマホと折りたたみソーラーパネルによって住所を持たずとも定住している人たちと同じように社会サービスを受けられるようになったと書かれていた。 ブロックチェーンはこれをますます加速していくんだと思う。
もともとはクラウド用語だった?XaaS (X as a service)は徐々に我々の暮らしに広く浸透してきている。MaaSなんかがその最先端だろうか。 さらに暮らす場所もXaaS化されノマドが増えていくのは不可避だろう。となると、ブロックチェーンは次世代の住所を与えるものになっていくんじゃないだろうか。
だんだん話が脱線していってしまったけれども、ブロックチェーンと道路の歴史に関係があるんだろうなぁという話です。