国際決済機関とは何をする場所なのか・SWIFTとの関係は?

今月は、「国際決済機関」について。 国際手形交換所とも呼ばれる存在である。

国際決済機関についての解説書というのは見つからなかった。

そこで、「マネーロンダリングの代理人」という、クリアストリーム事件のきっかけになった本を参考にした。 この本は国際決済機関の解説書ではなく、国際決済機関の一つ「クリアストリーム」を利用した不正な金の流れをかつてのメンバーが告発した本なのだが、ところどころに挟まれる国際決済機関についての解説を頼りした。

この本のはじめに金融の世界について

謎めいているこの世界では、情報はリアルタイムで循環する。ここでは言葉はコード化され、門外漢はのけものにされる。ルールはめったに文書化されないし、外部に伝えられることもない。

と書いてある。国際決済機関について語る本が見つけられないというのも、まさしくという感じである。

さて、今回も3つのセンテンス。

  • 国際決済機関は、金融機関の証券取引をバーチャルに実現する
  • 国際決済は世界に2つしか存在しない
  • SWIFTからの排除はお金の移動ができなくなり、国際決済機関からの排除は証券の移動ができなくなる

目次

国際決済機関は、金融機関の証券取引をバーチャルに実現する

国際決済機関は、正式には国際証券集中保管機関と呼ばれる。

金融機関が口座を開設でき、お金と有価証券を預け入れることができる。(実際に保管するのはまた別のプレイヤー で、カストディアンと呼ばれる。)

相手も国際決済機関に口座を持っていれば、証券を他社に売るという手続きをお金を振り込んだり国際送金したり、また証券を輸送したりする必要なく金融取引ができるようになる。 国際決済機関の持っている口座のレコードの数字を書き換えるだけで完了するのだ。 銀行・証券会社が使うネット証券サービスと言ったら良いだろうか。

(ちなみに、国際決済機関が生まれるまでは有価証券の取引は実際に紙の証券を相手先に送っていたそうだ。 証券が届いて初めて代金を支払うので、1つの取引が数週間というオーダーの時間がかかっていたそう。)

加盟金融機関には、国際決済機関の口座リストが配布され、誰かに証券を送りたいときはリストから相手の口座番号を探して、その口座番号を使って取引を依頼することになる。

しかし、そのリストに乗っていない匿名口座というものが多数存在しているそうだ、、。

国際決済機関は世界にふたつしかない

国際決済機関は、ベルギーのユーロクリアとルクセンブルクのクリアストリームの2つしか存在しない。

ユーロクリアはモルガン・ギャランティ・トラストの一社支配であったのに対し、クリアストリームは特定の金融機関の支配ではなく中立的な運営を特徴とする。

ただし、国際決済機関として設立されたわけでなくとも実態としてそうなっている場所は他にもある。 あるアメリカ国内にある手形交換所には、アメリカに支店を持つ世界中の金融機関が口座を持っており規模は小さいものの国際的な決済が行われているそうだ。

SWIFTからの排除はお金の移動ができなくなり、国際決済機関からの排除は証券の移動ができなくなる

SWIFTからの排除は金融の核兵器などとも呼ばれていたが、このSWIFTと国際決済機関は切っても切り離せない。

SWIFTは、あくまで世界中の銀行に対して資金移動の指示を出すためのメッセージング基盤であって、SWIFT自体が送金手段であるわけではない。 国際的な送金をするには、通常何個も銀行を経由することになる。国を跨ぐ送金の場合、送り元口座のある銀行と送り先講座のある銀行が直接取引を持っていないことも多いので、直接取引のある銀行を辿って行く必要があるからだ。

SWIFTがない国際送金は伝言ゲームで、途中で止まるリスクもあるし何より時間がかかる。 しかしSWIFTがあると、経由地の銀行も皆同じメッセージを見ることができるので、円滑に取引が終わる。

このSWIFTはユーロクリア・クリアストリームにも接続しており、ユーロクリア・クリアストリームの口座が絡む取引メッセージを出すことができる。

国際決済機関がロシア証券の取引を拒否すると、ロシア証券の取引は国際決済機関登場以前の証券を相手先に送り届ける必要が出てくる。 SWIFTがロシアの銀行を排除すると、ロシアの銀行は国際送金をするためには途中経路の銀行みんなに個別に連絡をしなければならない。

どちらにしても、物理的に証券を運んだり相対送金をチェーンしたりすることはできるので、金融システムから完全に切り離されるわけではない。 しかし、圧倒的に遅くなる。世界の金融が新幹線のスピードになっているのに、人力のトロッコで走らされるようなものである。

読書ガイド(参考文献)

マネーロンダリングの代理人

著者は今のクリアストリームの前身セデルの創設メンバーの一人なのがだ、セデルが徐々に「悪い大人」に乗っ取られて最終的には追い出されてしまう。

追い出されたあとに自分たちの作ったセデルが悪事に使われていることを立証すべく、過去一緒にセデルで働いていた人たちと共闘を始めたことが描かれる。

仲間の一人が変死するし、カトリック教会教会の金の流れを正そうとしたヨハネ・パウロ1世の変死事件との関係も示唆されている。

財務省 円の国際化推進研究会「決済システム調査WP報告書」

第1章の欧州諸国の証券決済制度 第1節 欧州各国の証券決済システムをめぐる最近の動向

https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/yen_internationalization/report/koku1203b2.pdf

来月の学び

先月車の4年目点検をしたんだけれども、いまだに何をどれくらいの頻度でやるべきなのかちゃんと把握していない。

ということで、自動車を安心して乗り続けるための点検・部品交換についてまとめてみたい。


www.k5trismegistus.me