仕事の未来:学生インターンとAIの働き方

自分のいる会社では学生インターンを雇っている。 Webエンジニア志望の学生を一定期間無料でプログラミングスクールみたいなことをしたあと、アルバイトとして実業務に入ってもらうみたいな感じだ。

一番最新に入ったインターン生の仕事ぶりが未来を感じた。

最初の仕事

バックエンドエンジニアとして働いてもらうつもりで、とりあえずRailsチュートリアルを一周してもらった。 この時点で質問もどんどん出てきて学ぶ意欲がたかいなぁというのはなんとなく感じていた。

話してても有能な感じがしたので、Railsチュートリアルを一周しただけにしてはかなり難しめのタスクを振ってみた。 通常Railsチュートリアルが終わったインターンに最初にやってもらうタスクは、erbで書かれているビューをちょっと直してもらう程度なのだが、思い切って「Googleログイン」など他社APIを利用する認証周りに手を入れてもらうような内容を振ってみた。

本人が理解できないアウトプット

期待は良い方に裏切られて、まあいくら有能でも最初だしこれくらいかかるだろうと思って設定した締切よりも早く、おおむね完成という成果物を出してきてくれた。

だが不思議なことに、到達不能な箇所に余計なコードがついていたりする。

不思議に思って書いたコードの説明を頼んでみたのだが、実際出来上がっているコードを十分に説明することができない。(日本語ネイティブではないというのもあるが) 本人もなぜそれがあるのかわかっていないような感じがする。

で話を聞いていってみると、ChatGPT(GPT-4)に相談してサジェストされたコードを採用したらしい。その仕事ぶりには感心した。

「プロ」のエンジニアを雇わなくても、プログラミングを学びたい大学生アルバイトを雇ってGPT-4とGithub Copilotに1500円ずつ課金すれば十分戦力を増やせるという可能性がわかったわけだ。

※誰でもいいというわけではなくある程度素養は必要だと思う。当のアルバイトもコピペで能力の底上げはされているけれども、元の能力自体もちゃんとある。

インサイト:ホワイトカラーも人体を越えられるようになった

いわゆる「ブルーカラー」労働は、機械によって人間の能力を拡張することが当たり前に行われている。

工員に腕力ではなくプレス機で加工してもらう、ドライバーに腕力ではなく大型トラックで荷物を運んでもらうといったように、ブルーカラーでは機械を使って生身の人間の限界を越えるような働き方ができるのは当たり前だ。

しかしホワイトカラーは、ずっと生身の頭脳の限界が働き方の限界のままだったのがこれまでだと思う。

ホワイトカラー業務においては人に投資をすると言っても、必ずしもアウトプットが良くなるというものは少なかった。 研修を受けてもらうとかインプットをするか、ツールを提供してアウトプット以外の雑務を減らすか。当人のアウトプットの質が上がるかは、インプットを当人がうまく生かしてくれるかどうかに依存していた。 結局、その「人」の能力を底上げする努力はできるものの、人自体を拡張することはできずじまいだった。

生成AIによってはじめてホワイトカラー労働の世界にも「機械による人体の拡張」をもたらしたと言える。 いままで手で荷物を抱えて運んでいたのを大型トラックとはいわず台車をつかって運べるくらいになったくらいにはなったんじゃないだろうか。

余談:日本経済の生産性

日本は生産性が伸びていないとか言われつつ、製造業の生産性の伸びは高いようだ。

www.bloomberg.co.jp

日本では伝統的に?ブルーカラー労働者よりホワイトカラー労働者の方が上とみなされているが、人体の限界を超えた生産性を持っているブルーカラー労働者の生み出す価値を重視した方がいいんじゃないだろうか?

ちなみに

僕もAIの力を借りており、Github Copilotを使っている。

Github Copilotを使っていて感じることとしては、PythonやReactのコードを書いているときに比べてRubyやVueのコードを書いているときはあまり精度が高くない。 特にPythonの時は頭の中を読まれた!?と感じるくらい、ロジックすら自分が書こうとしているものをサジェストしてくれる。

技術選定の時にその言語・FWがAIのサポートを得られやすいかというのは経営観点で大きな意味を持つだろう。 低熟練度のエンジニアでも一人前として使えるのであれば、人材の確保という面ではメリットがある。 確保しやすい低熟練度の人材でもいいと言うことであれば、賃金も安く抑えられるし採用コストも下がる。

toyokeizai.net

この本で言うところの、WTSを押し下げる効果があるわけだ。