先日、昔の会社の先輩にあった。 その人は、もともと免許を持っていなかった。 けれども、昨年どうしてもスポーツカーに乗りたくなって免許をとり、そのままロードスターを買ってしまったという人である。
現行ロードスター、アルファロメオ・ジュリエッタのつぎくらいにリアはいいと思う
その場での話で、「テスラに乗ったけれども、その体験はインパクトがあって、テスラの製品が優れているのは間違いがないと思った。しかし相変わらずロードスターに乗ることはそれはそれで楽しい。その楽しさとはなんなのだろうか」みたいな話になった。
僕はテスラにこそ乗ったことはないが、レンタカーで色々便利装備のついている車に乗ったことはある。 確かに社会全体の利益を考えるとこういう事故を防ぐ機能がついた車が増えた方がいいんだろうなぁと思いつつ、楽しくないという感覚はあった。
テスラの車と我が家の500だとどちらが優れた車か。
何をもって優れているとするかは難しいが、我が家の500は先進安全装備もコネクテッド要素もないし、走行性能も負ける。 工業製品として見るとテスラの車の方が優れているという評価になると思う。
ただ、モノとして所有したいかどうか、という点で言うとテスラより500の方が魅力的だというのは、自分的には揺るがない。
デザインという主観的な部分(個人的にライトが丸目じゃない車は嫌い)というのもあるけれども、色々足りない、性能が低い、ユーザビリティも負荷が大きい、といった色々な(工業製品としては)「欠陥」を楽しむことができるところが魅力なのではないかと思った。
所有することによる利便性は将来なくなる
所有による利便性、手元にあるからいつでも使えるというのは別の理由として考えられるが、これは本質ではないように思う。
確かに、本を図書館で借りれば所有しなくても済むけれども、図書館まで借りに行かなきゃいけない。※ 家具や家電のサブスクも流行っているが、あれらは「借りっぱなし」で月額定額なので、サブスクというかリースに近いものだ。 ご飯を炊く時間だけ炊飯器を利用する(その間だけ炊飯器が家にあって、料金も発生する)というのはなかなか難しい。
でも、無人運転車やドローンによる配送が進めばそこはかなり解消されるのではないかと思う。 リアルタイムとは言わないまでも、ご飯を炊く1時間前にポチッとすればドローンが届けてくれて、炊き終わったら洗わなくてもドローンが回収に来てくれる。 エコノミクスが成り立つかは別に、技術的に想像できない程ではない。
所有され続けるには、愛すべき欠陥が必要
車に限らず、モノを所有しなければならない理由は、愛すべき欠陥があるからだという話に戻ろう。
まず、所有することの意義に自分なりのカスタマイズができるというのはある。 自分好みにカスタマイズしたいとしたら、それはツルシの状態だと自分にとって足りないということである。
あとここがよかったらもっと良くなるのに!という愛すべき欠陥があるからこそ、そこを自分なりに直して使いたい。 そのためには、改造してもいいように自分のものにしないといけない。 こういうのは一つあると思う。 ハード的に完成された製品は、手を加える理由がないからこそ所有しなければならない必然性がない。
もう一つ、徐々にその欠陥を乗り越えていく過程の楽しみというのもあると思う。 500の変速機はマニュアルトランスミッションに自動クラッチがついているという乱暴なものである。 それが最初のころは全然使えなかったのが徐々に慣れてきて、スムーズに変速できるようになった時には機械なのに「ようやく仲良くなった」という感覚すら覚える。
ただ、「愛される」というのが大事。ここは感覚値でしかないが。 全然動かない、とか、すぐ固まって動かない、とかは許されない。 ユーザー側で対処しようがあるとか、慣れると対処が簡単にできる学習曲線を持っているといった部分が重要なのかな、と思う。
ソフトウェアが価値の源泉のハードウェアは愛されない
テスラは自動車をハードウェア手動からソフトウェア主導へと動かそうとしている。
ソフトウェアが価値の源泉となる場合、ハードウェアはそのソフトウェアを動かすための依代にすぎない。 となると、ハードウェアは交換可能でよりソフトウェアをうまくうごかせるハードウェアが出たら、そっちを「使い」たくなる。
いまでこそテスラも本体の中に保存できるデータの蓄積があるから所有する意味があるかもしれない。 5Gの高速通信が当たり前になって自分のアカウントのデータが一瞬でダウンロードできるようになれば、どのテスラに乗ってもいいことになる。
今のスマホも、アプリとデータが5Gで即DLできるのであれば自分のスマホを所有する必要はなくて、必要な時に街中にあるスマホを手に取り指紋認証。そしたらすぐに自分のアプリとデータがクラウドからDLされる。 使い終わったらまた元に戻す。これもサービスとして成り立つかはわからないが技術的には想像できるし、そうなって良いと思う。
昔ノキアのスマートフォンに感じていたハードウェアの魅力は今のPixel(に限らず今のスマホ)からは感じられず、ハードウェアには全く愛着がわかない。 一方で、その先にあるサービスには参加意識がある。
2021年もGoogle Map貢献度トップ10%に入れた
モノからコトへの時代に所有され続けるためには
愛されるモノを作ろうと思ったら、ソフトウェアではなくハードウェアに愛される欠陥を作ろう。 というわけで、お題に合わせるなら僕の推しはFIAT500ということで、、
※ 本題からはそれるので下の方にしたが、本を買う理由に「書き込める」というのは大きな勢力としてあると思う。 ここについて、ARで書き込んで同じ種類の本なら、物理的なものとして別でも自分の書き込みが見られるようになったらいいんじゃないのかなぁと思った。
特別お題「わたしの推し」