先日のアイドルライブ初鑑賞から、「アイドルはなぜ踊るのか」ということについて考えていました。
つまり、この記事の続きです。
まず本題に入る前に、アイドルはいつからこんなに踊り始めたのかということについて。前回の記事で、次のようなことを書きました。
小学生の頃にモーニング娘。が流行っていたことくらいしかアイドル関連の記憶ってないんですが、昔からこんなに踊るものでしたっけ?
これについてですが、自分の感覚は間違っていなかったようです。
IDOL DANCE!!!: 歌って踊るカワイイ女の子がいる限り、世界は楽しい
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↑の本を書いた竹中夏海さんというアイドルダンスの振付師の人のインタビュー記事を読んだのだが、こんな言及が。
たとえばモーニング娘。って、いまではすごく踊るグループですけど、国民的な人気があったころは、ダンサーというよりは歌手として捉えられていたと思います。 (中略) でも日本人のイメージは、LOVEマシーンのころのモーニング娘。で止まっているような気がします。いっぽうでダンスをするアイドルという捉え方では、AKB48だったりももクロが思い浮かぶんでしょうね。いまやっと、そんなにアイドルに興味がない人でも、「アイドルって踊っているよね」ってイメージするようになってきたんじゃないでしょうか。
どうやら、アイドルがこんなに踊るようになったのはつい最近の出来事であったよう。以前の自分の分析から考えるに、アイドルが広い支持をうけなくなってドルヲタのための存在に変わってからの出来事っぽいですね。
https://weekly.ascii.jp/elem/000/000/124/124126/weekly.ascii.jp
では本題にいきましょう。
NHKのドキュメンタリーで、「地下アイドル」とよばれるグループに密着したものがありました。あんまり大声では言えないけどYoutubeにあるので興味がある人は見てみてください。 で、そのドキュメンタリーに取り上げられるアイドルとそのファンの口から、しばしば特徴的なワードが出てきます。それが、「頑張る」。
アイドルは「今一所懸命頑張って後悔したくない」「頑張ってる姿をお客さんに見せて元気をだしてほしい」、ファンの方は「自分は頑張ってこない人生を送ってきたけど、頑張っている人たちを見ると感動する」「推しの頑張っている姿を見て元気をもらって自分も頑張れる」等々。どうやらアイドルに求められるのは容姿よりも「頑張っていること」にシフトしてきている様子。コレを見て、アイドルがなぜ踊るのかわかった気がします。
アイドルの仕事は基本的に歌って踊ることですが、歌は生まれ持った声質にも左右される上、いろいろな良さの審級が存在します。適度に脱力していたほうがカッコイイ、とか。 一方で、踊りの方は歌に比べれば評価の軸が少なく練習すればするほど「上手」になっていくというのは異論ないところでしょう。 アイドルに限らず、オタク界隈ではキレが良ければうまいというものすごい一元的な価値観があるように感じています。 また、本番をみていても激しく体を動かしていればそれだけで大変そうというのがわかりますね。
このような特性によって、アイドルの「頑張り」をもっとも伝わりやすい形で表現できるのが「踊り」なのでしょう。 そのダンスがかっこ悪かろうが意味不明だろうが、身体的疲労が大きそうな踊りで「頑張っている」ことを過剰にアピールすることが重要なのではないでしょうか。
今のアイドルにもっとも求められているのは、「頑張る」こと。そして、それを最も雄弁に物語る手段が激しい踊りということです。
先のドキュメンタリーでも、新曲披露の前日に午前3時になっても自主的に練習をしてとにかく頑張ったという自己満足を得ようとしている姿が出てきます。 その物語はきっとファンにとってはすごい感動的な話に聞こえるのでしょう。
これ、箱根駅伝とか高校野球のときにわらわらわいてくる人たちと同じ論理ですよね。
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青少年を「頑張り教」で洗脳して疲れ果てている姿を自分たちは一切汗をかくことなく眺めて悦に浸っている人達。アイドル文化もまたこういう無自覚なサディスティックな欲望によって支えられているものだといえるでしょう。
ちょっと違うのが、アイドルの場合は見る側も汗をながしたがるところでしょう。でもこれも頑張り教で説明できる気がします。アイドルを自分がどれだけ好きかを目に見える形で表現しないと不安になってしまうのではないでしょうか。ここでもその表現形態としては踊りが使われているということです。
ファンのほうは別に良いんですが、小中学生の子供たちにとにかく「頑張らせる」だけのアイドルに仕立て上げること、これってよいことなんでしょうか。正直、児童強制労働に近いものだと思うんですけれども、、。