「Zoom飲み」に現れるアナロジーとこれからのコミュニケーション形態

緊急事態宣言が解除された日の話題としてはかなり時代遅れ感があるが、はじめて「Zoom飲み」に類するものをやった。 リオデジャネイロ・モスクワ・東京金沢と3つのタイムゾーンにまたがっていたが、ちょうど6時間ずつ時差があって朝9時(リオデジャネイロ)、夕方3時(モスクワ)、夜9時(東京金沢)というものだったので「飲み会」ではなかったが。(ブラジルからの参加者は働いていて、休憩時間だった)

無料通話アプリの登場

LINEのような無料通話アプリができるまで、電話というのは決して安いものではなかった。 NTTドコモの通話料金は1分16円ということなので、1時間話すと960円かかる。まぁ特に用もないのにつなぐにはちょっと高いなという感じだ。

https://k-tai.watch.impress.co.jp/img/ktw/docs/1065/980/lkh001_s.png LINEモバイルの場合

しかし今やLINEをはじめとする無料通話アプリが多く音声通話はほぼタダ同然で、実質無制限にかけつづけることができてしまう。 ビデオ通話も、携帯回線だと通信両制限があるので無制限というわけには行かないが、固定インターネット回線を利用していれば同様に実質無制限に繋ぎっぱなしにしておくことができる。

もちろん、無料でできるということは当然何か代償があると考えてもあながち間違いではないだろうが。

2つの可能性

ザ・サークル(字幕版)

ザ・サークル(字幕版)

  • 発売日: 2018/01/10
  • メディア: Prime Video

2017年の映画でザ・サークルというものがあり、「常時自分の生活を生中継する生活」という可能性が描かれている。

ちなみにこの映画自体はとてもつまらない。公開時は毎週読んだ本やニュース、みた映画を紹介する週刊記事を書いていたのだがそれがこれ。

www.k5trismegistus.me

「いきなり!黄金伝説」のスケルトンハウスのように一部の特殊な職業の人が、リアリティーショーのように自分の生活をすべて公開っていうのはありうるのかもしれないが、一般人のレベルでこういったことはまずありえないように思う。 コストに対する需要がない。

家にいながらにして誰かとつながるというのは情報や時間がコントロールされた範囲だろう。

つい先日、テレビで華原朋美の生活に密着ということをやっていたのだが、夜は毎日数時間母親と音声通話を繋ぎっぱなしにして会話しているようだ。 リビングにいながらにして、遠くにいる家族と会話ができる。これくらいのつながりが未来なのかもしれない。

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コミュニケーションの新しい固有のスタイル

「Zoom飲み」をやっている様子を、経験談などから判断するに、まだ現実に対面することのアナロジーで営まれているようである。 PCやタブレットを構えて、そこに「向き」合ってやるという感じで。

しかし、これからは徐々にオンラインのコミュニケーションであるという利点からこのスタイルは徐々に変わっていくのではないかと思う。

まず画面に向かって座ってコミュニケーションをとる必要は実はそんなにない。 自分の会社では、インターネット回線を無駄にしないため会議は基本的に音声のみで、資料を共有するときに画面共有をすることもあるが、スクショをチャットで送って「今送ったものを〜」みたいにすることも多い。 ビデオ通話の表情が見える安心感というのもあるっちゃあるが、むしろ画が気になって音声の方に集中できないこともある。

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音声だけでやってみるとわかるが、別に毎回肩肘張ってPCに向き合って話す必要はそんなになくて、着信は携帯で受けて通話はワイヤレスイヤホンとなっていればどんな姿勢でも会議ができる。別にそれを推奨するわけではないけれども、、。

それなのに画面についつい向き合ってしまうのは、まだ技術が先行しているが利用者側が過去のコミュニケーション形態のアナロジーとしてしかとらえきれていないということなのだろうか。 そのうち紙書籍をそのまま表示するのではなくスクロールに適応した漫画や、回転する画面や加速度センサーに対応した動画と同じように、新たなメディア特性に合致した形態へと洗練されていくだろう。 音声通話に関して言うと、それは無指向性だと思う。

華原朋美のユースケースというのも、携帯をスピーカーホン状態にして置きっぱなしにして、どっちを向いていても話ができるようになっていた。 一方向にどこかに「向く」必要というのはない。これが無指向性ということだ。

無料通話によって時間制約が取り払われた次は、こういう「指向性」制約もないコミュニケーションというのが今後加速していくのではないかと思う。


お題「#おうち時間