ゼレンスキー大統領が日本の国会で演説をするとなったときに、ロシアの行動の是非はともかくとして「紛争の当事者国」の片側につくのはいかがなものか、みたいな話があった。
しかし、現代の戦争は決して武器を使って血を流すだけではない。
毛沢東の人民戦争理論から発展したものか今は超限戦という概念が人民解放軍で名付けられているが、、日本もすでにロシアを敵とする紛争の当事者国であると考える。
ロシアはすでに、経済制裁を「宣戦布告のようなものだ」といっているし、日本は殺傷兵器を使って直接ロシア国民を傷つけることこそしていないが、すでにこの戦争には「参戦」している。
今のロシアに向けた経済制裁は単に武器を買う外貨を稼げないようにする程度のものではなく、ロシア国民に対して「プーチン政権を倒すか、飢えて死ぬか」を突きつけようというものとなろうとしている。
僕にはロシア人の知り合いが数人いるわけで、もしかしたら彼・彼女たちが飢えであったり治安の悪化が由来で死ぬかもしれない。 それでも、このロシアの暴挙を止めるために、仮にそうであったとしても今は取らざるを得ない措置であると思う。
イデオロギーの対立はまだ終わっていなかった
日本で得られる報道では、まるで世界中がウクライナに味方しているかのような錯覚を覚えてしまうが現実はそうでもない。 国連総会でのロシアに対する決議も、反対・棄権を合わせると40カ国存在する。
ロシアが反対するのはもちろん、中国・インド・パキスタンといった人口の多い国が棄権していることから、まぁ国民がどう思っているかは別にして「国」としては世界人口の1/3以上は、態度を明確にしていない。 こちらの世界から見ると明らかに不当な行為だと思う。国際社会というのは案外これを悪いと言い切らない国がこんなにあるというのは、驚きじゃないだろうか。
世界には、独裁体制の発展途上国が多くあるし、むしろ世界の民主主義は一時期に比べて後退しているというのが現実である。
独裁者たちにしてみたら、かつては帝国主義で散々蛮行をしてきた連中が勝手に世界中に押し付けているルールを破ったら、経済制裁だなんだってマッチポンプではないかという思いもあるだろう。
ロシアの銀行のSWIFTからの排除、ユーロクリア・クリアストリームでのロシア証券取扱停止、VISA・Mastercardの事業中断・・・大きなものから個人の生活レベルに至るまで、西ヨーロッパ・アメリカの作った金融プラットフォームからの排除がそのまま世界の金融システムからの排除である、という現実を目の当たりにしている。
独裁者のためのテクノロジー輸出に精を出す中国が中心になるだろうが、「独裁者でも安心して使える」金融システムへの需要は急速に高まっているかもしれない。
「歴史の終わり」はまだまだはるか先で、地球はまだまだ自由民主主義と、権威主義というイデオロギーの対立があるということを思いださせたのがこの戦争だと思う。
自分なりの人民戦争理論
旧冷戦の終結は、共産主義(という名の単なる権威主義)の元では豊かにも幸せにもなれなかったことで「第二世界」の民衆が自由民主主義を選好したことで終わったが、「中国モデル」の登場で、権威主義のもとでも(物理的には)豊かで幸せを感じさせることができることがわかってしまっている。 目に見えてわかりやすい物質的な豊かさでは、自由民主主義の魅力は相対的に低くなっている。 というのが、民主主義が後退する一つの原因でもあるだろう。
どちらが正しいか、ということには残念ながら答えがない。お互い信じるものの違いのぶつかり合いでしかない。
僕は自分達なら国民を導けると思い込んだ気狂い独裁者に指導されるのも、一般人に戦いようのないルールの中で私服を肥やそうとする守銭奴独裁者に支配されるのも、ごめん被りたい。 自由民主主義が正しいかどうかは知らないが、自分はその世界で生きたいと思う。
じゃあウクライナに義勇兵としていくかといわれると難しいけれども、権威主義陣営にわたる富がなるべく少なくなるように日常生活で気をつけていきたい。
余談
ソ連時代を経験していた知り合いは、共産党の高官の子供が西側に旅行に行くと、ローリングストーンズやクイーンのレコードをこっそり持って帰ってきて友人がカセットにダビングする、そのカセットはまたダビングされて友人にわたる、、、。 自分達も何回目のコピーかはわからないが仲間内ででこっそり聞いていたと言った逸話を話してくれたことがある。
(↓その時の話)
当時はきっと、そういった文化に触れることが権威主義を打倒するエネルギーを生み出したのだと思う。