NFTが役に立つ使い方 ブロックチェーン時代のマルス

最近、スポーツやエンターテイメントの世界でNFTをファン向けに販売する試みをいくつか見まして、思ったことがあったので。

ちなみに過去に書いたNFT関連の記事はこちら↓

k5trismegistus.me

k5trismegistus.me

ただのトレーディングカードになったNFT

prtimes.jp

moments.pacificleague.com

NFTを発行するのと刊行される単行本に名前が載るのって相容れないコンセプトだと思うのだが、どうか。

なぜNFTなのか、どんな展望があるのか全くわからないまま、単なるデジタルなトレーディングカードゲームと化していないだろうか。

講談社の例で利用されている"Manga Kollektion"というサービスには、以下のような記述がある。

NFT(Non-fungible token)は、ブロックチェーン技術によって認証され、安全性が確保された、偽造できないオンリーワンのデジタル資産です。NFTは、記念品として保管することも、セカンダリーマーケットでトレードすることもできます。

しかし僕の考えではNFTのポイントは所有権を表せるというところではない。NFTがデジタルデータにせよ現実世界のオブジェクトにせよなんらかの所有権を表すには、NFTと関係なく紐付けを行う権威が必要である。

先の例でいったら、講談社やパシフィックリーグである。そこが、やっぱり買ってもらったデータとの紐付けはなかったことにします!といったらもはや何者でもなくなる。

では何がNFTの凄いところなのか?というと、紐付けを行う権威が決めたルールだけは守られつつも、無関係の第三者が新しいアプリケーションを展開可能である点である。

NFTが適するユースケース

といったNFTのポイントを踏まえると、NFTが一番適するユースケースは、「旅行・イベント」予約だと思う。

コンサートや飛行機のチケットやホテルの宿泊権など、座席や部屋と利用する日時の組み合わせで同じ商品が存在しない。 まさに、ノンファンジブルな商品である。

今、ホテルの空室を複数の予約サイトで管理する際には予約管理システムを導入し、それで各サービスと連携をしているそうだ。

kawashimablog.com

しかし、空室管理がNFTを用いてできるようになれば、各ホテルの自助努力に任せなくても、ダブルブッキングを厳密に防ぐことができる。 (上場しているホテルグループなんかだと、あまりにつまびらかに空室状況が見えてしまうのはNGだったりするのかな?)

さらに、個人でも素晴らしいUXのアイディアを使って旅行予約サイトを始めることができるかもしれない。

「予約の取れない宿」の宿泊権やコンサートのチケットのような希少性がある転売で生まれる差益の半分を元売りに還元するようなスマートコントラクトにし、かつ所有者の公開鍵とチケットを結びつけて認証できるようにすれば転売からオリジナルの権利者からも利益を得られるし、この仕組みにのっていない転売を阻止できる。

日本から世界をとりに行ってほしい

日本の鉄道は正確性がよく褒められるが、実はさらに凄い点がある。なんとオンライン座席予約システムは日本の国鉄が世界に先駆けて実用化しているのだ。(下記HPによれば、飛行機ではすでに事例があったらしいが)

museum.ipsj.or.jp

当時,米国の航空会社で離着陸区間ごとの人数をオンラインで予約管理している例はあったが,航空機に比べて乗降車駅の多い列車で,座席位置まで含めた予約管理を実現したのは世界でも初めてであった.

かつてマルスは韓国の高速鉄道の予約管理をしていた実績もあり、海外に進出しかけた実績もある。

「日本の鉄道はスゴい」というと、どうしても車両や線路の整備や運転士の技量の方が注目されがちなように思うが、正確で安全な運航を支える情報システムも優れたものであるはずだ。 この優位を失わないような次の時代への投資が必要だ。

現在航空券の予約管理を扱っているアマデウスITグループは、パナソニックやJR東海を時価総額で上回っている。 マルスを作った日本から、これを倒すプロトコルが出てきたらいいなと思う。

ちなみに

国立科学博物館で初期のマルスが展示されている。めちゃかっこいいので、見たことない人はぜひ。

museum.ipsj.or.jp