ヒップホップ×ラグジュアリー:コミュニティが作る現代ファッションのハイプ戦略

ヒップホップを聞いてみたという記事を書いたのが夏前。

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その後ヒップホップにはあまりハマらなかったのだが、ヒップホップ発の人たちがファッションリーダーになっている現象を知り、なぜなのか考えていた。

「ラグジュアリーとストリートの接近」みたいなフレーズ。

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以前何かの文脈で、今のラグジュアリーブランドのクリエイティブディレクターは、ハイプを作る能力が最重要になった、といった話を聞いたことがある。 そこから考えを膨らませてみて、ある考えに至った。

ストリートファッションの本質:仲間を示すコード

ストリートとは?コミュニティを示すファッション文化

ストリートにおけるファッションは、世間の人からみて洗練されていると思われることやかっこいいと思われることよりも、「仲間を見分ける」ということが重要視される。

日本でも「池袋ウエストゲートパーク」で、カラーギャングが取り上げられた。あれはアメリカのストリートギャングの文化を猿真似したものになる。

青いバンダナを身につけるのは、かっこいいからじゃなくて「自分はCripsの一員だぞ」とコミュニティの仲間に伝えるための手段である。

ヒップホップとファッション

ここで疑問になるのは、なぜファッションに強く入り込んだのがロックでもジャズでもなく、ヒップホップだったのかという点だ。

ヒップホップは誕生からして「コミュニティのコード」を体現してきた文化だった。 ブロックパーティやクルー文化、ギャングスタラップに見られる「自分はどこに属しているか」を示す強い要素。

余談:日本版ストリートカルチャー

ストリートファッションの代表といえばTシャツだ。

また、おそらく「好きなもの」のTシャツ、映画のポスターやロックバンドのアルバムアートそのままのTシャツを着ている人たち。 なぜだろうと思っていたのだが、あれって自分はこれが好きだよ、というメッセージを伝えて直接会話しないまでも、同じ趣味の人に「仲間がいるよ」ってメッセージを送っているのだろうか。

そういえば学生の頃、「クラスTシャツ」なんか買わされたことがないだろうか、、、。 かっこよさ・洗練とは無縁で仲間を示すためのアイテムということであれは日本のストリート文化と言えるだろう。

「クラスTシャツ」を収集して、時代ごとのクラスTシャツでどのように「仲間」「団結」を表現しているか考察している人はいないのだろうか。

ラグジュアリーブランドの戦略

さて本題に戻ろう。

ラグジュアリーブランドがストリートに接近しているのは、この「コミュニティのコード」としてのファッションアイテムという考え方を利用したいためではないか?というのが今の気づき。

ラグジュアリーブランドはSNS上を流れるアイコンから、「クールな人々」という架空のコミュニティがあるかのように思わせ、消費者はそのブランドのアイテムを身につけることでコミュニティの一員になった気になれる。

世間から見て洗練されている必要はなく、むしろ「クールなコミュニティ」の外の人からすればダサく見えるようなアイテムを「クール」だと思っていることが自分が「クールなコミュニティ」に属しているということの証拠にすらなる。 例えば、バレンシアガのダッドスニーカーなんかは、一種の踏み絵みたいなものだと思われる。

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チョコレートプラネットの「ブランド」というコント動画があるが、これが結構芯を食った風刺になっている。 ファッションを知らない人たちにどう思われるかではなく、「クールなコミュニティ」の中で評価を得ることが大事なのだが、それが外から見ると滑稽に見えるという。

www.youtube.com

ストリートの手法から「ハイプ」へ

このストリート由来のマーケティング手法こそが「ハイプ」の本質ではないだろうか。

ブランド同士のコラボや限定アイテムは、「クールな人々」コミュニティにちゃんとついていけていることを示す。

例えば「ダッドスニーカー」は、こんなダサいのあえて出しますという「ネタ」に対して「BALENCIAGAのこのネタに乗れる」(ネタもわかるし金もある)を伝えるためのものだ。

Triple S スニーカー

そんな時代のクリエイティブディレクターは、架空の「クールな人々」コミュニティの中心人物として、「面白いネタ」を提供できると認められるか(あの人と同じコミュニティに属したいと思わせられるかどうか)が求められる。

なので、ファッションバックグラウンドではなくともカニエ=ウエストとかファレル・ウィリアムスのような人物が重宝されたのではないだろうか。

ラグジュアリーは「モノ」ではなく「コミュニティ体験」を売っている。

個人的には観光地で売っているおもしろTシャツと同じじゃないかと思ってしまうのだが、違うのは価格が100倍するということくらいだ。

未来のクリエイティブディレクター

2000-2010年代は、それができる人材としてヒップホップミュージシャンが活躍した。

人気Vtuberがアパレルブランドとコラボする事例も出てきているし、大きなところではNinjaというYoutuberがアディダスとコラボした例があるようだ。 ミュージシャンよりも強固に「ファンコミュニティ」を束ねている点では、彼らの方が先をいっている。

uptodate.tokyo

そうなったらもう世も末だろうとは思うのだが、少なくとも「仲間を見分けるコード」を提供するという観点では最先端だ。